先日「思いやりの心を育むにはどうしたらいいのでしょうか」というご相談がありました。
お話をきいてみると、こんな出来事があったそうなのです。
それは個別指導塾での出来事。
先生と生徒が1対1で授業を行っていました。
ですが、授業が終わったその時、先生が貧血で倒れてしまったそうなのです。
先生が倒れた音に驚いた相談者が、あわてて別室からかけつけたところ、授業をうけていた小学生は、まるで目の前のことをみえていないかのように後片づけをしていたとのこと。
あわてて、倒れた先生の介抱をしている相談者にむかって
「はい、これ先生におかあさんから」
そうして手渡されたのは、倒れてしまった先生へのお礼の品でした。
その日、その子と先生とは最後の授業だったそうなのです。
他人への関心が薄くなっている
実は今、こども達が他者に寄せる関心はとても低くなってきていると言われています。
このコロナ禍で、長らく私たちは他者と触れ合うことを禁止されてきました。
今のこどもたちにとっては、もはや他者と関わらないことが当たり前。
だから目の前で、友達が転んでしまっても、倒れてしまっても、手を貸してあげる子は極端に減っているのだそうなのです。
メラビアンの法則
「7-38-55のルール」という言葉をご存じでしょうか。
人が他者から情報を受け取るのは、言語情報(Verbal)からは7%、聴覚情報(Vocal)からは38%、視覚情報(Visual)からは55%だそうです。
これはメラビアンという心理学者の実験により、提唱されました。
メラビアンの法則、または3つの頭文字をとって3Vの法則と言われています。
つまり私たちは、他者とコミュニケーションをとるのに、言葉から得られる情報はほんの少ししか影響をうけていない。
表情、しぐさ、声のトーンなどの言語ではない情報が大部分を占めているのです。
マスク生活でこどもの持つ表情のデータが少ない
しかし今、長く続いたマスク生活で、家族以外の表情をほとんどみたことがないという子もいます。
他者の感情を感じ取るために、表情をみることはとても大切です。
ですが、そもそも人の表情をみることがあまりないので、感情を理解するためのデータ量が少なすぎるのです。
うれしいのか、悲しいのか、怒っているのか、つまらなそうなのか
表情ももちろんですが、声のトーン、しぐさや雰囲気や距離感など。
私たちはそれらを感じ取って、今、他者がどんな状態なのかを想像していきますよね。
でもそのような体験の積み重ねができていない子どもたちが、今はとても多いのだということなのだと思います。
思いやりの心を育てるために、私たちにできること
こんな中、大人がこどもたちのためにできることはなんでしょうか。
私が考えたのは、つぎの3つです。
- できるだけマスクを外し、表情豊かにこどもに接し、感情を伝えてあげること
- しぐさや声のトーンなど、非言語のコミュニケーションも気をつけながら、こどもに寄り添ってあげること
- 大人が、他者を大切にする姿をしっかりこどもにみせていくこと
これらは、少し遠回りな方法に思えるかもしれません。
でも、こどもはやはりそばにいる大人をみて様々なことを学習していくものです。
自分がだれかに優しくされれば、人にも優しい態度をとれる。
思いやりのある大人に育てられれば、人を思いやることができるこどもに育っていきます。
少しずつかもしれないけれど、そうしてお互いに助け合える関係ができていく。
そんな輪がひろがっていくことで、思いやりのあふれる世の中になることを願っています。
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