お子さんとの接し方に悩むこと、多いですよね。
ほめる育児が大切と言われていますが、こどもが言うことを聞かないと困っている方も多いことでしょう。
言うことを聞いてくれなくてイライラして、つい大きな声がでてしまう。すると、ますますこどもは言うことを聞かなくなる。そんな悪循環で、自己嫌悪に…。
そんなみなさんに、私がおすすめしたいのが「PCITから学ぶ子育て」という本です。
PCITとは
PCITとは、1970年代アメリカでセーラ・アイバーグ教授によって考案・開発された、プレイセラピーと行動療法に基づいた心理療法です。
アイバーグ先生は小さなこどもの問題行動は放っておいても改善するのか、それとも成長後の問題につながるのかという研究を行いました。その結果は、3歳の時点で激しい攻撃性があり、それを放置した場合、思春期の非行や暴力につながるリスクが大きいというものでした。
そこで、アイバーグ先生はこどもの問題行動に対応するために、ご自分が専門とされていたプレイセラピーと、このころアメリカで関心が高まっていたペアレントトレーニング(親が行動療法の子育てスキルを学ぶこと)を組み合わせ、PCITを開発されました。
プレイセラピーはこどもに働きかけ、ペアレントトレーニングは親に働きかけるものですが、肝心な親子の関係が変わらないと、問題行動はなかなか解決しなかったからです。
PCITで、親子の関係がよくなるにつれて、お互いが良い方向に導きあうようになりました。またADHDやASDのこどもの症状も改善されるなどいろいろな効果がうまれ、今現在も研究は進んでいます。
4つの親のスタイル
PCITでは親のタイプをその養育スタイルによって4つにわけています。
①許容的な親
このタイプの人は子供にやさしく、寛容であたたかみのある関わりをします。
ただ一方で、子供の行動を制限することが苦手です。
つまり簡単にいうと、優しいのだけど、「子供をあまやかしてしまう」ということです。
こどもは小さいときは、活発ですが、年齢があがるにつれて、反抗的になりやすく、自己中心的な行動が増え、集団生活が苦手になる傾向があります。
②関係欠如的な親
こどもに対して無関心、これといった要求もしなければ、関わりもあまり持たないタイプです。
放任主義で食事や安全面はカバーされていますが、心の育児が充分ではないのです。
こどもは、感情のコントロール方法や社会的なルールを家庭内で学ぶことができず、自分を保護するスキルを学ぶこともできません。
すると、衝動的なふるまいをしたり、対人関係でトラブルをおこしてしまう可能性があります。
③独善的な親
ルールに厳しく、こどもへの要求が高いタイプです。
「教育熱心」で「しつけにきびしい」のであたたかみにかけるところがあります。
子供は不安を感じやすくなり、自信を失いがちです。
自尊心も低くなる傾向があります。人とのコミュニケーションに自信が持てず、うまく関係を結べなくなることがあります。
④リーダーシップのある親
家庭内でのルールが明快で、子供を一人の人間として尊重しつつ、子供の選択を応援できるタイプです。
あたたかみがあり、子供の年齢や発達に見合った、適切な要求や制限をします。
また社会を生きるうえでの必要なルールを教えています。
子供は親を信頼し、尊重されて育つので、自己肯定感が高まります。
ルールをきちんと学んでいるので社会的スキルも育まれていきます。
どのようにほめていったらいいのか
4つのタイプにそれぞれ長所と短所がありますが、④のリーダーシップのある親が望ましいですよね。どのようにこどもに接していけばいいでしょう。
そのヒントはこどものほめ方にあります。
「上手にできたね。」「すごいねー」とほめていると、こどもは万能感を持っていきます。小さいうちは万能感を育てることは大切です。そこでまずはとにかくしっかりこどもをほめて認めていくことです。
しかし発達がすすむにつれてだんだんとその万能感を適切に削っていくことも大切なポイントです。
また、ほめるポイントが
「テストで100点とってすごい」とか、「かけっこが一番ですごい」
など、成功した時だけほめていると、こどもによっては
「一番でない自分はだめなんだ」と思ってしまう可能性もあります。
ではどうしたらよいでしょう。
それは、ほめている理由をこどもに伝えられるよう具体的にほめていくのです。
「勉強をがんばったからすごい」とか「一生懸命走ってかっこよかった」
「一番になった」のような結果ではなく、その過程をほめるようにします。
すると、勝つことだけではなくがんばることが大切なのだとこどもは学びます。
親も自然に、こどもが負けたり、点数がよくなかったときでも、こどもをほめる(認める)ことができるようになっていきます。
また、何気ない日常の一場面をていねいにほめていきます。
たとえば
「静かに座っていてくれてありがとう」
のように、よくあることだけれど見過ごしてしまいそうな小さなことです。
何に対してありがとうと言われたのかがこどもにわかるように具体的にほめていきます。
すると、こどもは「静かに座っているとほめられる」とうれしい気持ちになり、
「静かに座っている」
という、こどもに身に着けてほしい行動がふえていきます。
こどものことばを繰り返す
こどもは、おとうさんやお母さんが自分をしっかり受け止めていてくれると感じることができると、安定します。親子の愛着を築くことができると、家庭を安全地帯と感じ、そこから外の世界に向かっていくことができるのです。
そのためにどうしたらいいか。
こどもの話をきくときに、こどもの言ったことばを繰り返すということが大事なポイントです。
「くるま」「くるまだね」
しっかりとうなずきながら、こどものことばを繰り返して伝えます。
これは、カウンセリングの技法でもあるのですが、話をきくときにこどものことばを繰り返して伝えることで、「話を聞いてもらえている」「受け止めてもらえている」と 安心感が生まれます。
また、親がことばを受け止めてくれている態度がモデルになり、こどもも人の話をきく力を身に着けていくことができるのです。
あせらずにゆっくり
いかがでしょう。PCITの考え方はお子さんとの接し方のヒントになったでしょうか。
参考にしていただければうれしいです。
ただ知識として知っていてもなかなかうまくいかない場合だってもちろんあります。その人をとりまく環境や状況によってどうすればよいのかという考え方も異なってきます。
おかあさんやおとうさんが完璧をめざしすぎて疲れてしまっては元も子もありません。
正解はひとつではありません。
いろいろ試しながらあせらずゆっくり子育てを楽しんでいってくださいね。
参考図書:「PCITから学ぶ子育て」小学館
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