子どものウソをどう理解する?注意引き行動への応用行動分析的アプローチ

子育てをしていると、子どもが「ウソ」をつくことに戸惑う場面があるかもしれません。
「なぜこんな、すぐわかるウソをつくのだろう?」と悩むことも多いでしょう。
子どもがウソをついたとき、その背景にある行動の意図にはどんなものがあるのでしょうか。
応用行動分析(ABA)の視点から考えてみたいと思います。

ウソをつく子ども

ある時、子どもが部屋のカギをかけてしまい、先生に叱られるという出来事がありました。
先生は、
「あなたがカギをかけたのね。先生は見ていました。そんなことをしたらみんなが困るでしょう。これからはそんなことはしてはいけません。」
と叱りました。
しかし、それに対して子どもは
「ボクはやっていない」と答え
「いいえ、先生は見ていました。ウソをついてはいけません!」
と、平行線のやり取りが続いたそうなのです。

このウソは一見すると、ただの子どもの「反抗」に見えるかもしれません。
でも、応用行動分析(ABA)の視点から見ると、こんな理由がみえてきます。

応用行動分析(ABA)で考えてみる

応用行動分析(ABA)では、ひとつの行動を、きっかけ(Antecedent)、行動(Behavior)、結果(Consequence)という三つの要素にわけて分析していきます。

応用行動分析(ABA)についてはこちらの記事もどうぞ
ABAってなに?応用行動分析を用いた自閉症療育の方法

ではこのエピソードを、3つの要素にあてはめてみましょう。

  1. きっかけ(Antecedent): 子どもが部屋のカギをかけたこと。そしてそのことを先生から叱られたこと。
  2. 行動(Behavior): 「ボクはやっていない」とウソをついたこと。
  3. 結果(Consequence): 子どもはウソをついたことで、またさらに先生の注目(叱責)を得ることができたこと。

注意引き行動(注目獲得行動)としての視点

ここで重要なのは、子どもが部屋にカギをかけた行動そのものです。実はこの行動は、今までに何度も繰り返されていました。いくら注意してもまたカギをかけ、それを叱るとウソをついていたそうなのです。

注意引き行動とは?

注意引き行動とは、他者(おとな)の注目や関心を引くために行われる行動です。
今回のエピソードでは、子どもがカギをかけることで、先生の注意を引いているのではないかということです。
カギをかけると、先生から叱られるという反応(報酬)があり、それが注意引き行動として強化されてしまっている(行動が増えている)と考えられます。
注意引き行動をとる子どもは「叱られる」というネガティブな経験でも、自分に注目を集められてうれしいと感じます。
つまり「叱られる」ことも「先生からの注意を引く」ことに成功しているということなのです。

まとめ

子どもの「ボクはやっていない」というウソも、実はただの反抗ではなく、おとなの注意を引きたいという意図が隠されていることがあります。
その場合、困った行動をやめさせようとして子どもを「叱った」ことが、かえってその行動を増やす結果となってしまいます。
また、なぜこのような注意引き行動をとってしまうのか、その背景も考えてみましょう。そうすることで、ただ叱るのではなく、その行動を減らすためにどうしていったらいいのかが見えてくるのではないかと思います。
次回は、注意引き行動の具体的な対応策についてお話ししていきます。


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