数字カード

数やことばの課題でみえてくる3つの思考のタイプ

幼児期のお子さんにことばや数などを教えていると、理解の仕方が人によって全く異なるということを実感します。

お子さんを観察していると、どの特性をつかって物事を考えるのかー思考のタイプがみえてくるのです。

数唱を覚えるとき

例えば、数唱を教えている時。

1から10までなどの「数唱」をおぼえるのは、お風呂に入っているときが多いのではないでしょうか。

「10までかぞえたらでるよ」
「いーち、にー、さーん…」

これには歌を覚えるように、リズムにのって覚えていくという効果があります。

課題として行うときは同じようにリズムをつけながら、1つずつの数字のカードをつかい、1,2,3とならべていきます。

並べるときに、「いち、に、さん…」と言ってあげることで、数字と音が結びつき、覚えていくことができます。

こどもによって違うさまざまな反応

しかしこのやり方がだれにでも有効かというと、決してそんなことはないのです。

声をきくだけのほうが、覚えやすい子もいます。

また声を出すことがむずかしい子でも、すぐに1から10までの数字の並び方を覚えて、その下にさらに11から20まで並べられる子もいます。

また一方、とても上手にお話ができるのに、なかなか数唱がおぼえられない子もいます。

あるとき、そのなかなか覚えられなかったお子さんが、数字カードをみながら
「なんで、12には1がつくの?」と、ききました。

3つの思考のタイプ

こどもの反応にはどうしてこのような違いがあるのでしょうか。

自閉症当事者で動物学者のテンプル・グランディンは、人の思考には3つのタイプがあると考えています。

①画像で考えるタイプ

テンプルグランディン自身が画像タイプだそうです。

このタイプの人の脳のなかにはたくさんの画像のストックがあり、考えるときには画像を思い浮かべているのだとか。

特にASD(自閉症)の人は、この画像タイプが多く、テンプル・グランディンの脳画像では、視覚神経路の部分が通常よりもかなり大きいことが確認されています。

仮説としてですが、テンプルグランディンは一語期に発達上の問題があり、「見ているもの」と「言っていること」の接続をしなかったため、聴覚の神経路があまり成長しなかった。

それを補うために視覚神経が成長したのではないかと書かれています。

(テンプルグランディンは幼児期にはことばが話せなかったそうですが、様々なトレーニングを行い、ことばを獲得しました。)

②言語、事実で考えるタイプ

私自身はこのタイプです。

体験したことを思い出すときも、映像はあまり浮かびません。かわりにことばや文が頭のなかでぐるぐるめぐります。

あの時、あの人はこう話していたとか、あの時はこういうことがあったなどと、ことばで思い出していることが多いのです。

先ほどの「12はなんで1がつくの」と聞いたお子さんもこのタイプではないかと思います。

「12」という数字が「10」と「2」を表しているという、意味を、説明をきいて理解したいのです。

ちなみに私は空間認知能力はとても低くGoogleマップがないとなかなか目的地にたどり着くことができません。

③パターンで考えるタイプ

このタイプの人は、様々なことの規則性(パターン)を見つけ出し、そしてその認識したパターンを記憶にとどめておくことが得意です。

テンプル・グランディンによると、視覚思考には、物体視覚思考と空間視覚思考があり、パターンで考えるのは空間能力が高い人(空間視覚思考者)だそうです。

チェスの名人や、コンピュータープログラマーなどにこのタイプの人は多いとのこと。

もともと自然界にはパターンが数多く存在し、そのパターンを見つける能力は人間の本質の一部なのだとか。

ゴッホやショパンのような天才と呼ばれる人たちの作品には、幾何学的な形式がみられ、それは自然界にあるもの(フラクタル)とほぼ一致するのだそうです。

天才たちは、自然界に存在するパターンを直感的に理解していたということになります。

とても興味深いですよね。こちらの動画でも紹介されています。

https://www.ted.com/talks/temple_grandin_the_world_needs_all_kinds_of_minds?language=ja

得意な領域を活かしていく

もちろん、人が何かを考えるときは、3つのうちのどれかひとつだけを使っているというわけではありません。

数字カードをすぐにおぼえてならべることができる子は、画像とパターンを使って考えているのだと推測できますし、だれでもそれぞれの領域を少しずつ使って思考しています。

ただ、普段からどこを優位に使っているかということに注目し、知っておくことで、学習にも生活にも応用することができます。

その子の理解しやすい方法を考えてあげればいいのです。

そして、最終的に自分の強みを活かした仕事をして生活していけるように、今から一歩一歩学んでいけるといいですね。

テンプル・グランディンの著書、「自閉症の脳を読み解く」には、そのタイプ別に向いている仕事が紹介されています。

その他にも感覚や感情の話など、全編を通じてとても内容が濃くおもしろいです。

ご興味がありましたらぜひご覧になってみてくださいね。


参考図書:自閉症の脳を読み解く NHK出版

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