前回の記事では、子どもが「ウソをつく」ことや「カギをかける」行動について、応用行動分析(ABA)の視点から、その背景にある意図を探りました。それは子どもが大人の注目を引こうとする「注意引き行動」の可能性があり、叱ることでかえってその行動を強化してしまう(行動が増える)ことがあるというお話でした。
今回は、そのような注意引き行動に対して、実際に大人がどのように対応すれば良いのか、具体的な方法を考えていきます。
注意引き行動にどう対応するか:具体的なステップ
子どもが部屋のカギをかけ、さらに「カギをかけていない」とウソをついてしまう場面で、子どもを叱らないで対応する時、どうすればいいのでしょうか。その一例を考えてみましょう。
1.大人が問題を解決しない
まず、大人が自分でカギをあけてしまうという選択肢がありますが、これは避けた方がいいかもしれません。
この方法では子どもは、自分の行動がどのような結果をまねくのかということを実感することができず、すべて大人の力で問題が解決されてしまいます。
これでは、子どもが「自分で問題を解決する力」を学ぶ機会を奪うことになってしまいます。
たとえば、子どもがカギをかけてしまうことで他の子どもが入れないという問題がおきた場合、すぐに大人がカギを開けてしまうと、子どもは自分の行動が他の人に与える影響を実感することができません。
もし子ども自身がカギを開けるようにうながされた場合は
「自分がしたことが原因でみんなが困っている」
と気づき、問題を解決する責任を感じることができます。
これにより、次回同じような場面でも自分で解決しようとする力を育むことができるのです。
そのため、可能な限りまずは子ども自身にカギを開けさせるように促しましょう。これが、責任感や問題解決能力を育てる第一歩となります。
2. ウソを追求しない
子どもがウソをついていると感じても、その場でそのウソを追求しないほうが良いと私は思います。
「先生は見ていました。あなたはウソをついてますね」と追及してしまうと、子どもはかたくなになり、かえって問題解決がおくれてしまう事があります。
ウソを指摘するよりも、まずは「カギをあけること」に集中しましょう。
3.子どもが自分で考えるための言葉がけ
「カギがかかっていてお友達がはいれなくて困っているよ。どうしたらいいと思う?」
というように、今の状況を伝えて解決策を考えるように言葉をかけます。
この時の会話の目的は、子どもが自分から「カギをあけよう」と考えられるようにすることです。
子どもの自発的な気持ちをうながすために、子どもを信じて言葉を待ちましょう。
4.カギをあけた後のフォローアップ
カギをかけるという行動が、子どもにとっての注意引き行動である場合、その代わりとなる適切な行動(代替行動)を教えることが大切です。
たとえば、
「もし一人で静かに過ごしたいときは、先生に言ってね」
「何か困ったことがあったらいつでも相談してね」
などのように、子どもが大人に「どうしてほしいのか」を言葉で伝える言い方を教えましょう。
まとめ
注意引き行動の背景には、子どもが抱えるさまざまな感情や欲求があります。
子どもは必ずしも悪意を持って行動しているわけではなく、「自分に気づいてほしい」「理解してほしい」「安心したい」といった気持ちから行動を取っていることが多いものです。
そこを想像したうえで、ただ単に叱るのではなく、子どもの意図や背景を理解しながら対応することが大切です。
まずは冷静に対応し、子ども自身が自分で解決するという機会をつくることで、責任感や問題解決能力を育てることができます。
そして、注意引き行動をするのではなく、自分の気持ちを言葉で伝えられた時には、そのことをしっかりほめてあげてくださいね。
お互いに気持ちの良いコミュニケーションが築けるように、ABAのアプローチが参考になればうれしいです。
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